「喉渇いた〜!サンジ、水くれ!」
「この暑さじゃさすがに水が先か。ほらよ」
夏島の気候だと分かっていても渇きには抗えないだろう。それは麦わら屋に限った話ではなく、おれも同じ状態だった。
もう数え切れないほど繰り返した情報交換と言う名の逢瀬。今回は麦わら屋の方からの連絡で、近場に居たおれ達が合流する形になった。今朝の合流直後から冒険に駆り出され、戻ったのは昼過ぎの今。暑さもピークを迎えた頃だ。
黒足屋から手渡されたグラスには冷えた水。それもただの水ではなく、果物や食用花の風味が香るものだった。麦わら屋が勢いよく仰ぎ飲むのを片目に見つつ、おれもグラスに口をつける。ふわりと香ったのは柑橘系の爽やかな香りだった。
「美味いな」
「トラ男も好きか、この水!」
おれの一言に目を輝かせた麦わら屋へ小さく頷く。
「ああ、果物と花の香りがする」
「だよな!おれも好きなんだよ」
一緒だな、と声を弾ませた麦わら屋とおれを見た黒足屋が感心したような表情を向けてきた。
「へェ、ルフィもだがお前も鼻がきくんだな」
「これくらいならな。凝ってるじゃねェか、黒足屋」
「ま、淑女達のためなんでね」
ブレない気遣いの理由に納得すると、麦わら屋がおれの手元にあるグラスを覗き込んだ。
「なんだ」
「トラ男の方からは違う香りがするなって思ってよ」
「別々の水を出したのか?」
「ああ、お前らが好みそうな方をな」
「おれ、トラ男の方も飲んでみてェな」
好みと聞いて興味深くなったのだろう。益々グラスを見つめる麦わら屋におれもまた、麦わら屋のグラスを見やる。
「麦わら屋」
「おう!」
互いに考えていた事は同じらしい。
黒足屋が席を外したタイミングでお互いの口元にグラスを運んで、そのまま飲み合った。
「こっちも美味いな」
「蜜柑の香りがする!いいな!」
互いの好みもまた好ましいという真実は、グラスだけが知っている。