「……それでお前は怒ってんのか、麦わら屋」
「他に理由はねェ。それとも、トラ男には心当たりがあんのか?」
「いや。ねェな」
身勝手な願いだという自覚はあったし、以前麦わら屋自身から拒否されてもいた。
だが、目の前で麦わら屋の命が尽きるかもしれないと思わされたあの瞬間、おれの中から迷いは消えていた。
無論、今こうして話ができているという時点でおれの決断は覆されたのだろうが。しかし、覆したところでおれの中にある願いが消えた訳でもない。麦わら屋の怒りはそこにあるのだろう。
額に片手を添えて深く息を吐き出す。この問題に関しては平行線を辿ると分かってはいた。
「トラ男」
「謝らねェぞ、おれは」
「謝ってほしいから怒っているわけじゃねェ」
「ならどうしろってんだ」
此方をじっと見据える麦わら屋と視線を合わせる。
「お前が身勝手に願うなら、おれも身勝手に認めねェ」
視線を合わせたまま断言する麦わら屋に目を瞠る。そこで硬くなっていた麦わら屋の表情が緩んだ。
「何度だって覆してやるさ。そうすりゃ、トラ男とはずっと一緒に居られるんだからな!」
ししし、と笑ってみせた麦わら屋におれはもう一度深く息を吐き出して笑い返した。
「お互い身勝手に生きるのがおれ達だからな」