「好きだ、トラ男」
目が覚めて、最初に聞こえた声は予想通りの相手だった。だが、聞こえた言葉は予想外で。おれは、頭上に見える麦わら屋の顔を凝視する。霞んでいた視界の焦点が合った時、そこに見えたのは今にも泣き出しそうな麦わら屋の顔だった。
「……泣いてんじゃねェよ」
「まだ泣いてねェ!!」
まだと言ってしまうところが麦わら屋らしくて微かに笑うと、膨れっ面になった麦わら屋がベッドの傍にある椅子へ座り直した。
「終わったのか?」
「ああ、終わった。皆無事だ」
「そうか。……お前を信じて正解だった」
あの時、麦わら屋になら託せると思えた理由は一つしかない。近くにある麦わら屋の手をそっと握って、どこまでも黒く真っ直ぐなその瞳を見据えた。
「おれも、お前が好きだ」